読んだ本
著者:梅田阿比
クジラの子らは砂上に歌う 5 (ボニータコミックス)
著者:似鳥 鶏
クジラの子らは砂上に歌う 6 (ボニータコミックス)
著者:梅田阿比
クジラの子らは砂上に歌う 7 (ボニータコミックス)
著者:梅田阿比
チュートリアル (Kindle Single)
著者:円城 塔
クジラの子らは砂上に歌う 8 (ボニータコミックス)
著者:梅田阿比
クジラの子らは砂上に歌う(9)(ボニータ・コミックス)
著者:梅田 阿比
すばらしい新世界〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)
著者:杉田 敦
ひとこと
今月も、先月に引き続き漫画ばかり読んでいました。年末年始は実家に帰省しており、その間、梅田阿比『クジラの子らは砂上に歌う』を読み進めていました。良質なハイ・ファンタジィであり、また謎解き的な要素もあり、読むほどに先の展開が気になる作品です。
似鳥鶏『家庭用事件』は〈市立高校シリーズ〉の最新刊ですが、今作も全体に粒ぞろいの短編集です。最後に収録されている「優しくないし健気でもない」では、*****という事実も明らかとなり、それでもシリーズとして整合しているという点には、著者の力量を感じざるをえません。そのテーマ設定のしかたも、著者の包摂的な眼差しを感じさせるものとなっており、好感度が上がります。
Kindle というサーヴィスを利用して初めて読んだ書籍であるところの円城塔『チュートリアル』は、同時に初めて読む円城塔単独によるところのテクストとなりました(伊藤計劃との共著『屍者の帝国』は読んだことがあります)。感想としては、まあ、くどい文章だなあ(笑)といったところ。ものごとを突きつめて考える人の、突きつめて考えた痕跡がありありとみえるような文体は、好きな人にとってはたまらないものなのだろうなあと思われます。べつに私は嫌いではないし、「意識の流れ」的なコンセプトでテクストをしたためんとするばあいには、私も似たような文章を書いているような気さえしています。円城においては、意識の流れそのものが理屈っぽい特徴をもっていると想像され、であるがゆえにこのようなくどい文章ができあがってしまうのだと考えられます。
オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』は、上質な SF(ディストピアもの)的設定を与えられたコントといった風情。とにかく笑えます。おすすめ。もちろん、全編にわたってコミカルな調子であるわけではなく、高度に管理化された社会のグロテスクな側面を逆説的に描き出すことにも成功していると思います。
岩波書店のシリーズ「思考のフロンティア」の一冊、杉田敦『権力』ですが、普段生活したり運動したりするなかで直面するさまざまな抑圧や非対称性など、「なんとなく権力にかかわっていそう」な部分を的確に解きほぐしたい人にとってはたいへん適していると思われます。様々な権力論に順次フォーカスを当て、各理論により可能になること/取り漏らされてしまうことをしっかりと論じており、入門書として優れています。
「思考のフロンティア」シリーズは、某精神分析学の教員が「このシリーズは全部読むとよい」と言っていた(たしか)ので読んでみましたが、上掲の本ではコンパクトに本質的な議論がまとまっており、たいへん好ましかったです。他の本も読んでみようと思います。
次回からはこんなに感想を書かないと思います。