革命前夜の藻塩草

Anthologie à la veille d'une révolution

久々に『電波女と青春男』を観て思ったこと

《注 1》本稿は 2018 年 6 月 11 日に筆者がツイートした内容を適当に改変しまとめたもの。したがって、今一つ脈絡がないのはご愛嬌ということで。

《注 2》ネタバレ注意。

 久々に『電波女と青春男*1を観て思ったが、この作品では「諦め」が一つのキーワードとなっているようだ。宇宙への夢と空想を諦めさせられたエリオと、それを強いた真。連れ合いの死後、いつしか前向きな生を諦めるようになった田村さんと、彼女をあの世へ連れ去ろうとする(「キャトルミューティレーション」)宇宙人こと「無気力」の退治を決行した女々さん。真への恋心を諦めきれない前川さん。ソフト・ボールの投手として突出した能力ゆえにチームに勝利への期待を与えてしまう一方で、チームの力が今一つであるために決して試合に勝つことができず、結果として勝利を諦めきれない花沢さん。市内の草野球の試合において圧倒的な花沢の投球の前に土壇場で逃げ出してしまう前川父、かつて少年サッカーで活躍することを諦めた真。上達は人よりもずいぶんと遅いながらも、決してバスケ部での活躍を諦めない流子。

 星宮社は言う。「頭回して成長しろ! 出来ることまで諦める必要はないと気づけ、ボケナス!」 地球の重力を振り切り、宇宙を目指して垂直に飛び上がっていくように。一生を賭してわずか数センチ先の超能力に向かって前進していくように。彼女によれば、秒速 0.00000000198 センチメートルで進めば、一生(約 80 年)をかけて 5 センチメートル先の超能力に至ることができる*2。ある者は信念を持ち続け、ある者は失った感情を再び取り戻し、またある者は自分の手に負えないほどの神秘を押しつけられる。自転車の落下によってエリオに変化を強いた真は、隕石の落下によって社に完全敗北を喫する。ここにはそんな「諦め」をめぐる爽やかな群像劇が描かれている*3

星宮社

星宮社。筆者の推し。

*1:入間人間による同名のライト・ノベルを原作とする、2011 年放送のテレビ・アニメ。アニメ版は原作のはじめ 3 巻に相当するエピソードを描く。

*2:5/((80*365+20)*24*60*60) - Google 検索

*3:実際、後半は一回のエピソードの中に諦め云々というセリフが何度も登場するから、テーマとして意図的に用いられていると思われる。