革命前夜の藻塩草

Anthologie à la veille d'une révolution

社会情報熱力学試論

小学校で習う日本史の復習から始めよう。日本国には、行政区分として四七の都があり、それぞれの都は四七の道に分かれ、道は四七の府に、府は四七の県により構成される。これが「四七都道府県」である。一九世紀後半、藩と呼ばれた日本各地の行政区画は、黒…

there exists only one

「やあ。はじめまして」 きっと初対面の私たちは、まず自己紹介から関係を始めるのが無難かもしれない。とはいえ、私自身が何者かであるかという情報は、あなたが何者かであるのかという情報と同じくらい無意味だと思う。なぜなら、私は何者でもない存在とし…

反/エコ-テロ-資本主義への準備運動

"エコ-テロリズム"と呼ばれるようなラディカルな環境保護運動は,これまでのところ圧倒的な勝利を収めている.数人の活動家による派手なパフォーマンスが実行されるたびにそれは世界中に報道され,何千万もの人民の目に入る.ある者はゴッホにトマト・ス…

汚染処理水の海洋放出に反対する

2023年8月22日現在,福島第一原発からのALPS処理水放出が決定し,同24日にも海洋放出が開始されるとの報道がなされている.我々は断固としてこれに反対する. そもそも,福島県沿岸部をはじめとして,首都圏から遠く離れた辺鄙な土地に原発を造ってきた意味…

まだ死刑にされていないだけの諸君へ

このブログを発見し,訪れてくれた読者諸氏には,まずは歓迎の意を表したい.諸君がこの文章を読んでいるということは,すでに私はこの世に生を受け,有毒な文章をネットに書き散らすといった狼藉をはたらいたり,それを同じくこの世に生を受けた諸君が読ん…

無題

過去の愚かしい出来事を,たんに未成熟ゆえの過ちのようにしか思っていないなら,愚かしい出来事はくり返されるだろう.「昔のひとは莫迦だったんだな」と嘲笑して切って捨てるなんて,結果を知っているからできることにすぎない.もし自分が過去の出来事に…

いまここにあるラダイト――インタネットを蠢動するお前たちへ(6)

いま検索エンジンがやろうとしているのは,個別のサイトに誘導せずに知識を提供することである.うっとおしいスニペットにしろ意味不明なおしゃべり AI *1にしろ,けっきょくは知識をインスタントに提示してみせることにすぎない.たしかに,検索結果を表示…

震災直後の記憶(1)

3.11の本震が東日本を襲ったとき,私は中学校の校庭で部活動をしていた.担任の教師(部活の顧問ではない)が何か騒いでいるのに気づいた.携帯電話を掲げて「地震!」と声を張り上げていた.緊急地震速報が届いたらしい.数秒ののち,足元に強い揺れを感じ…

『神々の山嶺』観た.

『神々の山嶺』を観た.夢枕獏の手になる同名の小説を原作とした谷口ジローの漫画をもとに,2021 年にフランスとルクセンブルクで制作されたアニメーション映画である.原題(?)は ≪ Le Sommet des dieux ≫.媒体と言語がそれぞれ2回,跳躍しており,なん…

倫(みち)なき道をいくために――インタネットを蠢動するおまえたちへ(5)

芸能人,有名人の恋愛事情はしばしばニュースをにぎわせる.毎日,どこかしらで,誰かしらの事情が暴かれる.そして例によって,それをうけたあなたがた “一般の” ひとびとが騒ぎ立てるわけであるけれど,他人の恋愛に興味のないわれわれのような人間にとっ…

それが(あ|い)るということについて――あらがいのデクララシオン

ふと,「ある」と「いる」の違いって何だろう,と思った.古い文章だとか,それらを模して書かれたかのような最近の古風な文章ではよく,「(人物が)ある」という言い回しが使われているのを見る.一方で,現代の “自然な” 日本語では,ほとんどの場合「(…

インタネットを蠢動していることへの自己批判――インタネットを蠢動するおまえたちへ(4)

とある会員制短文投稿サイトを長らくやっていると,頭で考えたことを一瞬で放流してしまう知的不誠実な態度が身についてしまったり,140字という制限のある文章を考えるのに最適化されたかのような短絡的な思考に陥ってしまったり,力強い言葉にたよって…

2022 年アニメ総括

世界が 2023 年を迎えて数日が経った.せんだって 2022 年から継続試聴していたアニメ作品の最終話が一応終わり,ひと区切りがついた.このタイミングで,過ぎ去った一年を振り返る意味において,また今ここでしかありえないだろうようなしかたで抱く感情を…

Windows で Emacs 風キー・バインドを使えるようにしたら快適だったという話

タイトルどおりの記事である. とはいえ 必要なのは情況の説明であろう.私は普段,Windows 搭載 PC と Macbook Air の両方を使っている.Windows は私物である.パソコンを使いはじめてからというもの,ずっと OS は Windows を使ってきた.Mac のほうはと…

日本語(D)と日本語(B)(あるいは無数の日本語たち)

以下は、1年以上前に下書きに残していた文章である。ここしばらくはブログに何かを投稿しようという気にならなかったので、ログインもせずにずっと放置してしまっていた。供養というわけでもないが、テクストは日の目を浴びることではじめて意味をかたちづく…

ゴダール『イメージの本』(Le Livre d'image) の解釈についてのメモ

戦闘性(戦争、革命)が人間の本質的な部分に存在している。 ドーファにおける反体制運動;石油資源の産出がなく、貧しいこの地において、本来起こりえないものだった。しかし、煽動を受けた市民は爆弾を投げるようになる。 戦争は権益を求める一部の者のた…

インタネットを蠢動するおまえたちへ(3)

おまえたちの憎しみは贋物だ。 おまえたちは、憎しみという一見すると個人的とも思える感情すらをも、他者を模倣したしかたでしか生み出すことができない。おまえたちは、おまえたちではない誰かを憎む。しかし、おまえたちはその「誰か」を知らない。その「…

インタネットを蠢動するおまえたちへ(2)

考えろ。頭を使え。莫迦共が。そんなんだからおまえたちは最低最悪の莫迦なんだよ。莫迦は罪だ。民主主義を根本から無力化するし、被害にも加害にも気づけないからだ。莫迦は自傷していることを知らない。おまえたち莫迦共はその選択をよかれと思ってやって…

エテュディオンの覚醒

ひさびさに授業に出た。 わけあって半期休学していたので、最後に大学に行ってから7~8ヶ月ほど経っていた。本稿では、いまの心持ちを簡単に記録する。 まず、進級をしたいと強く思うようになったというのがある。まだ1年しか足踏みしていないが、在学期間に…

ラランティ

夢の中でしばしば走ることがあるのだが、もれなく、400 m 走の最後 100 m のような、酸欠で脚が重くて動かない(いわゆる「きれた」)状態で走っており、遅々として前進できない辛さが毎度よみがえる。 こんなトゥイートをした日の夜に、またもや妙な夢を見…

アルティクル

近ごろハッとした話をしよう。 といっても(ここで「といっても」などと留保をつけたがるのが、じつにわたしらしく、みっともないとも思うのだけれど)、「ハッとした」のが誰かといえばそれは紛れもなくわたしであり、それがインタネットの底を這いずりまわ…

ヒラガナノススメ

漢字ばかりの莫迦っぽい文 漢字を「ひらく」といういい方がある。漢字で表記することもできることばを、あえて漢字にせず、ひらがなで書くことをいう。逆に、漢字を「とじる」といえば、ひらがなを漢字で書くことをいう。わたしは、なるたけ漢字をひらいて文…

インタネットを蠢動するおまえたちへ(1)

じつは、わたしにも世の中の動向を知る技術が多少あり、したがって、知りたくもない情報を知ってしまう危険性につねに晒されていることになる。ちょうど、わたしたち全員が、宇宙や大地からやってくる放射線を浴びて、遺伝子の変異するリスクに直面させられ…

2019 年 1 月の読書まとめ

読んだ本 クジラの子らは砂上に歌う(4)(ボニータ・コミックス) 著者:梅田阿比クジラの子らは砂上に歌う 5 (ボニータコミックス) 著者:梅田阿比家庭用事件 (創元推理文庫) 著者:似鳥 鶏クジラの子らは砂上に歌う 6 (ボニータコミックス) 著者:梅田阿比ク…

2018 年 12 月の読書まとめ

読んだ本 クジラの子らは砂上に歌う 1 (ボニータコミックス) 著者:梅田 阿比クジラの子らは砂上に歌う 2 (ボニータコミックス) 著者:梅田 阿比クジラの子らは砂上に歌う 3 (ボニータコミックス) 著者:梅田 阿比 ひとこと 昨年末、漫画しか読んでないな...…

何も考えない人

インタネットのみなさん、こんばんは。虚無小路虚無篤(きょむのこうじきょむあつ)です。インタネットやめましたか? みんなやめてますよ。最高の気分が味わえますよ。やせられますよ。 ところで、お聞きしたいことがあるんですが、あなたは普段、何を考え…

塾と保護者と子どもの教育

簡単な自己紹介 突然だが、読者諸氏は、塾へ通ったことはあるだろうか。 筆者は通ったことがあるし、じつは現在進行形で通っている。 正確にいえば、筆者は小学校中学年の時分から中学生の終わりまで学習塾へ通い、主に文科省による学習指導要領に沿った学習…

ある冬の朝に

12 月。いま、ここは冬だ。 私は分厚い板ガラスを 2 枚も備えた戸に手をかけて、思い切り引っ張る。戸はゴロゴロと緩慢にレールの上を走りだし、それに接触している人間が一人通るのに必要十分と思われる幅の空間を作り出したあたりで動きを止める(私が引っ…

久々に『電波女と青春男』を観て思ったこと

《注 1》本稿は 2018 年 6 月 11 日に筆者がツイートした内容を適当に改変しまとめたもの。したがって、今一つ脈絡がないのはご愛嬌ということで。 《注 2》ネタバレ注意。 久々に『電波女と青春男』*1を観て思ったが、この作品では「諦め」が一つのキーワー…

インターネットをやめるべきたった一つの理由

われわれは今回、いささか挑発的なタイトルを冠した記事を書き始めたわけであるが、われわれが重大な局面を迎えつつあるということを、筆者はここで伝えておきたいと思っている。インターネットをするとはどういうことなのか。それは、ネット文明にあって、…