革命前夜の藻塩草

Anthologie à la veille d'une révolution

2023-01-01から1年間の記事一覧

社会情報熱力学試論

小学校で習う日本史の復習から始めよう。日本国には、行政区分として四七の都があり、それぞれの都は四七の道に分かれ、道は四七の府に、府は四七の県により構成される。これが「四七都道府県」である。一九世紀後半、藩と呼ばれた日本各地の行政区画は、黒…

there exists only one

「やあ。はじめまして」 きっと初対面の私たちは、まず自己紹介から関係を始めるのが無難かもしれない。とはいえ、私自身が何者かであるかという情報は、あなたが何者かであるのかという情報と同じくらい無意味だと思う。なぜなら、私は何者でもない存在とし…

反/エコ-テロ-資本主義への準備運動

"エコ-テロリズム"と呼ばれるようなラディカルな環境保護運動は,これまでのところ圧倒的な勝利を収めている.数人の活動家による派手なパフォーマンスが実行されるたびにそれは世界中に報道され,何千万もの人民の目に入る.ある者はゴッホにトマト・ス…

汚染処理水の海洋放出に反対する

2023年8月22日現在,福島第一原発からのALPS処理水放出が決定し,同24日にも海洋放出が開始されるとの報道がなされている.我々は断固としてこれに反対する. そもそも,福島県沿岸部をはじめとして,首都圏から遠く離れた辺鄙な土地に原発を造ってきた意味…

まだ死刑にされていないだけの諸君へ

このブログを発見し,訪れてくれた読者諸氏には,まずは歓迎の意を表したい.諸君がこの文章を読んでいるということは,すでに私はこの世に生を受け,有毒な文章をネットに書き散らすといった狼藉をはたらいたり,それを同じくこの世に生を受けた諸君が読ん…

無題

過去の愚かしい出来事を,たんに未成熟ゆえの過ちのようにしか思っていないなら,愚かしい出来事はくり返されるだろう.「昔のひとは莫迦だったんだな」と嘲笑して切って捨てるなんて,結果を知っているからできることにすぎない.もし自分が過去の出来事に…

いまここにあるラダイト――インタネットを蠢動するお前たちへ(6)

いま検索エンジンがやろうとしているのは,個別のサイトに誘導せずに知識を提供することである.うっとおしいスニペットにしろ意味不明なおしゃべり AI *1にしろ,けっきょくは知識をインスタントに提示してみせることにすぎない.たしかに,検索結果を表示…

震災直後の記憶(1)

3.11の本震が東日本を襲ったとき,私は中学校の校庭で部活動をしていた.担任の教師(部活の顧問ではない)が何か騒いでいるのに気づいた.携帯電話を掲げて「地震!」と声を張り上げていた.緊急地震速報が届いたらしい.数秒ののち,足元に強い揺れを感じ…

『神々の山嶺』観た.

『神々の山嶺』を観た.夢枕獏の手になる同名の小説を原作とした谷口ジローの漫画をもとに,2021 年にフランスとルクセンブルクで制作されたアニメーション映画である.原題(?)は ≪ Le Sommet des dieux ≫.媒体と言語がそれぞれ2回,跳躍しており,なん…

倫(みち)なき道をいくために――インタネットを蠢動するおまえたちへ(5)

芸能人,有名人の恋愛事情はしばしばニュースをにぎわせる.毎日,どこかしらで,誰かしらの事情が暴かれる.そして例によって,それをうけたあなたがた “一般の” ひとびとが騒ぎ立てるわけであるけれど,他人の恋愛に興味のないわれわれのような人間にとっ…

それが(あ|い)るということについて――あらがいのデクララシオン

ふと,「ある」と「いる」の違いって何だろう,と思った.古い文章だとか,それらを模して書かれたかのような最近の古風な文章ではよく,「(人物が)ある」という言い回しが使われているのを見る.一方で,現代の “自然な” 日本語では,ほとんどの場合「(…

インタネットを蠢動していることへの自己批判――インタネットを蠢動するおまえたちへ(4)

とある会員制短文投稿サイトを長らくやっていると,頭で考えたことを一瞬で放流してしまう知的不誠実な態度が身についてしまったり,140字という制限のある文章を考えるのに最適化されたかのような短絡的な思考に陥ってしまったり,力強い言葉にたよって…

2022 年アニメ総括

世界が 2023 年を迎えて数日が経った.せんだって 2022 年から継続試聴していたアニメ作品の最終話が一応終わり,ひと区切りがついた.このタイミングで,過ぎ去った一年を振り返る意味において,また今ここでしかありえないだろうようなしかたで抱く感情を…